認知症患者の家族がまず直面するのは生活に関する資金だと思います。不要となった契約の手続きを行う必要があります。
金融機関はもちろん、行政への公的証明の発行、携帯電話や公共料金等の解約、保険契約の変更に際しては本人の意思決定が基本であり、親子間でもその変更に易々と応じてもらえません。それ自体は本人の権利や個人情報の保護のためにやむを得ないことだとは理解できます。
しかし、例えば、認知症の親の携帯電話を解約することについて、本人が使えない携帯電話の契約を継続し、料金を引き落とされ続けることは適切ではありません。多額の費用が必要となる医療費や介護費等を捻出するため、少しでも資金を確保することが本人や家族の利益に資することは言うまでもありません。
しかし、実際は簡単には解約できません。本人の意思が確認できなければ解約のお申し受けはできませんと述べられる店舗も少なくなく、認知症を発症した高齢者は解約できず、死亡するまで財産を搾取され続けるこという構図が現実に起きています。
保険会社は本人の意思能力や容体を実際に確認することで契約を修正しており、意思能力に対する法律の建前と現場の歪みを調整することに苦慮していると感じます。しかし、コロナウイルス感染症等が一たび蔓延すれば、家族や関係者でも面会ができなくなり、手続きが事実上停滞するとうケースも起きています。
本人の権利を守るための意思確認の徹底が、かえって本人の利益を害する事態になっています。このような軋轢は高齢化が急速に進む昨今、至るところで生じているものと思います。
雑感として、急速に進む高齢社会において成年後見人制度だけでは硬直的すぎると感じました。真に本人の権利を保護するためには、本人の意思能力がなくなった場合の親族等による代理制度の構築が近い将来急務になってくるのではないでしょうか。